求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~

えぇっ、なんでいないの!? どこに行ったの!?

私は嘘が得意じゃない。
これ以上、夏輝にツッコまれたら確実にボロが出るだろう。

こうしている間も、「なぁ、本当に付き合ってんのか?」と夏輝は探るように私を見てくる。

じりじりと壁際まで迫られ、万事休す、とばかりにギュッと目を閉じる。瞬間、頭にふわりと何かが舞い降り、右手がグイッと強く引かれた。

あれっ、この香り……。

微かに鼻を掠めたフローラルの香りは、洗濯で使う柔軟剤のもの。

髪に落とされた感触がタオルだと気づくと、「ごめん」と呟かれる。瞬間、柔らかく唇を塞がれた。

えっ……。

それは瞬きすら許さない、ほんのひと時。

頭からはらりとタオルが落ち、伏し目がちの上原課長と視線が絡み合う。

熱の籠った瞳と見つめあう、一瞬。
今度は唇を食まれ、甘く口づけをされる。
啄むように角度を変え、何度も……。
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