政略結婚は純愛のように~狼社長は新妻を一途に愛しすぎている~
部屋についているお風呂を使わせててらって布団の上にぺたりと腰掛けていると、襖の向こうに人の気配を感じた。
背の高い見慣れたシルエットが、遠慮がちに咳払いをする。
「今井君…?」
「はい。」
立ち上がって由梨は襖を開ける。
由梨と同じく風呂に入ってさっぱりとした部屋着の加賀がいた。
「…遅くに、すまない。」
「い、いえ。」
先日の台所とは違い明るいところで、お互いにお風呂上がりの姿で顔を合わせているのが気恥ずかしい。
由梨は首に掛けていたタオルを外した。
「…どうかされましたか。」
部屋着でも加賀は加賀だと由梨は思う。
ラフな格好のはずなのになぜこんなに格好いいのだろう。
そう思ってから由梨は自分の中の変化に少し驚きを感じる。
やはり、自分は加賀に惹かれ始めているのだろうか。
「いや…、特には。ただ、この間みたいに眠れないんじゃないかと思って。」
雪景色の日本庭園を背に加賀が静かに言った。
昼間の彼を見るうちにあの夜ホットミルクを作ってくれたことは夢の中の出来事だったのではないかと思っていたが、やはり現実のことなのだ。
あの優しい甘い香りが由梨の脳裏に浮かんだ。
「あの日は吹雪だったから…。風の音が苦手なんです。だから吹雪の日は眠れなくて…。」
加賀は頷いて窓の外を見た。
雪は静かにしんしんと降っている。
「…じゃあ、今夜は吹雪いてないから大丈夫…?」
由梨は頷こうとして躊躇した。
そう、今日は大丈夫。
けれど…。
加賀を見上げるとアーモンド色の瞳が優しく見下ろしている。
由梨はそれを吸い寄せられるように見つめた。
「大丈夫…?本当に…?」
優しい声音なのに、何故か逆らえないようなものを感じた。
狼の群れの頂点に立つアルファーの瞳が由梨を見ている。
「あの…。」
由梨はゆっくりと口を開く。
「ん?」
加賀が先を促すように右の眉をあげた。
「あの…。やっぱり、眠れそうにありません。」
「そう。…じゃあ、ホットミルクを作ってあげよう。」
加賀が満足そうに微笑んだ。
背の高い見慣れたシルエットが、遠慮がちに咳払いをする。
「今井君…?」
「はい。」
立ち上がって由梨は襖を開ける。
由梨と同じく風呂に入ってさっぱりとした部屋着の加賀がいた。
「…遅くに、すまない。」
「い、いえ。」
先日の台所とは違い明るいところで、お互いにお風呂上がりの姿で顔を合わせているのが気恥ずかしい。
由梨は首に掛けていたタオルを外した。
「…どうかされましたか。」
部屋着でも加賀は加賀だと由梨は思う。
ラフな格好のはずなのになぜこんなに格好いいのだろう。
そう思ってから由梨は自分の中の変化に少し驚きを感じる。
やはり、自分は加賀に惹かれ始めているのだろうか。
「いや…、特には。ただ、この間みたいに眠れないんじゃないかと思って。」
雪景色の日本庭園を背に加賀が静かに言った。
昼間の彼を見るうちにあの夜ホットミルクを作ってくれたことは夢の中の出来事だったのではないかと思っていたが、やはり現実のことなのだ。
あの優しい甘い香りが由梨の脳裏に浮かんだ。
「あの日は吹雪だったから…。風の音が苦手なんです。だから吹雪の日は眠れなくて…。」
加賀は頷いて窓の外を見た。
雪は静かにしんしんと降っている。
「…じゃあ、今夜は吹雪いてないから大丈夫…?」
由梨は頷こうとして躊躇した。
そう、今日は大丈夫。
けれど…。
加賀を見上げるとアーモンド色の瞳が優しく見下ろしている。
由梨はそれを吸い寄せられるように見つめた。
「大丈夫…?本当に…?」
優しい声音なのに、何故か逆らえないようなものを感じた。
狼の群れの頂点に立つアルファーの瞳が由梨を見ている。
「あの…。」
由梨はゆっくりと口を開く。
「ん?」
加賀が先を促すように右の眉をあげた。
「あの…。やっぱり、眠れそうにありません。」
「そう。…じゃあ、ホットミルクを作ってあげよう。」
加賀が満足そうに微笑んだ。