政略結婚は純愛のように~狼社長は新妻を一途に愛しすぎている~
長坂は、夫婦はそれぞれのやり方で夫婦になっていくと由梨に言った。
本当にその通りだと由梨は思う。
今井家の醜態をさらしてしまったけれど、隆之と自分はまた少し近づいた。
それがとにかく嬉しくて由梨は微笑んだのだ。
それなのに。
「あぁーー。」
隆之はため息をついて由梨の胸元に顔を埋める。
癖のある黒い髪が由梨の頬をくすぐった。
その感触は意外なほど柔らかい。
「あ、あの隆之さん?」
いつも冷静沈着、それでいて温厚な隆之らしくない振る舞いに由梨は戸惑う。
その表情を見たくても抱きしめられた腕の力が強すぎて、身動きが取れない。
「あのー。」
由梨が声をかけると、ようやく隆之は顔を上げた。
その顔が少し赤いような気がするのは気のせいだろうか。
「その笑顔!俺に笑いかけてくれるのは初めてだ!」
少し拗ねたような表情をみせる隆之にまた由梨は驚いてしまう。
「え!?そ、そんなことはないと思います。勤務時間中は、いつもにこやかにするように心がけていますし、結婚式の時だって…。」
「義務で笑うのではない心からの笑顔だ。あぁ、以前タクシーの中でも見たな、けれどあれは俺にじゃなかった。」
隆之は戸惑う由梨にもう一度軽くキスをして額と額をくっつけた。
そして至近距離でじっと由梨を見つめる。
「俺は由梨のその笑顔に弱いみたいだ。…その笑顔を見せられると今すぐにでも全てを手に入れてしまいたくなる。」
全てとはどういう意味だろう、とはもはや由梨も思わない。
隆之の瞳の奥が燃えている。
同じように由梨の心も燃えるように熱くなった。
「由梨、俺の妻になる覚悟はできたか?」
由梨の全身が震えた。
もちろんそれは恐れからくる震えではない。
愛しい人に求められている、その事実に身体が歓喜に震えている。
そして同じように由梨も彼をほしいと思った。
彼が上司だとか名家の御曹司だとか自分たちは政略結婚なのだとか、そういうことは今頭から吹き飛んだ。
ただ目の前の男性が愛おしくて愛おしくて余計なことは何も考えずに身を委ねたくなる。
「由梨?」
甘い甘い隆之の声が、瞳が、由梨を優しく促す。
なんてずるい人と由梨は思う。
こんなに魅力的な声音で瞳で尋ねられてはノーと言えるわけがない。
こくんと由梨は喉を鳴らす。
その答えを口に出すのはとても恥ずかしい。
けれどちゃんと由梨の口で答えなければ彼が許してくれないのもわかっていた。
熱に浮かされたように隆之を見つめたまま、由梨はついに掠れた声を絞り出した。
「…はい。」
本当にその通りだと由梨は思う。
今井家の醜態をさらしてしまったけれど、隆之と自分はまた少し近づいた。
それがとにかく嬉しくて由梨は微笑んだのだ。
それなのに。
「あぁーー。」
隆之はため息をついて由梨の胸元に顔を埋める。
癖のある黒い髪が由梨の頬をくすぐった。
その感触は意外なほど柔らかい。
「あ、あの隆之さん?」
いつも冷静沈着、それでいて温厚な隆之らしくない振る舞いに由梨は戸惑う。
その表情を見たくても抱きしめられた腕の力が強すぎて、身動きが取れない。
「あのー。」
由梨が声をかけると、ようやく隆之は顔を上げた。
その顔が少し赤いような気がするのは気のせいだろうか。
「その笑顔!俺に笑いかけてくれるのは初めてだ!」
少し拗ねたような表情をみせる隆之にまた由梨は驚いてしまう。
「え!?そ、そんなことはないと思います。勤務時間中は、いつもにこやかにするように心がけていますし、結婚式の時だって…。」
「義務で笑うのではない心からの笑顔だ。あぁ、以前タクシーの中でも見たな、けれどあれは俺にじゃなかった。」
隆之は戸惑う由梨にもう一度軽くキスをして額と額をくっつけた。
そして至近距離でじっと由梨を見つめる。
「俺は由梨のその笑顔に弱いみたいだ。…その笑顔を見せられると今すぐにでも全てを手に入れてしまいたくなる。」
全てとはどういう意味だろう、とはもはや由梨も思わない。
隆之の瞳の奥が燃えている。
同じように由梨の心も燃えるように熱くなった。
「由梨、俺の妻になる覚悟はできたか?」
由梨の全身が震えた。
もちろんそれは恐れからくる震えではない。
愛しい人に求められている、その事実に身体が歓喜に震えている。
そして同じように由梨も彼をほしいと思った。
彼が上司だとか名家の御曹司だとか自分たちは政略結婚なのだとか、そういうことは今頭から吹き飛んだ。
ただ目の前の男性が愛おしくて愛おしくて余計なことは何も考えずに身を委ねたくなる。
「由梨?」
甘い甘い隆之の声が、瞳が、由梨を優しく促す。
なんてずるい人と由梨は思う。
こんなに魅力的な声音で瞳で尋ねられてはノーと言えるわけがない。
こくんと由梨は喉を鳴らす。
その答えを口に出すのはとても恥ずかしい。
けれどちゃんと由梨の口で答えなければ彼が許してくれないのもわかっていた。
熱に浮かされたように隆之を見つめたまま、由梨はついに掠れた声を絞り出した。
「…はい。」