政略結婚は純愛のように~狼社長は新妻を一途に愛しすぎている~
ここから始まる
幸せな気持ちで心からの微笑みを見せた由梨の頬を隆之の大きな手が包む。
その温もりが涙に濡れた頬に心地良くて由梨はうっとりと目を閉じて頬ずりをした。
その感触をゆっくりと堪能してから瞳を開くと、なぜか難しい顔で見下ろしている隆之と目が合った。
心なしか彼の瞳の色が濃くなっているように思った。
「…隆之さん?」
自分は何か間違えたのだろうかと由梨が首を傾げたとき、隆之が深いため息をついた。
そして情欲の炎を灯した視線で由梨を射抜くように見る。
「…俺は君の笑顔に弱いと言っただろう?その俺に、そんな笑顔を見せておいて、まさかあれだけのキスですむと思っていないよな?」
思ってもみなかった隆之の言葉に由梨は耳まで真っ赤に染まる。
「え…?あっ、そ、そんなつもりは…。」
その官能的な響きを纏った声音に、由梨は慌てて首を振った。
「そんなつもりは?なかった?」
優しく聞き返す隆之に由梨はこくこくと頷く。
たしかに以前隆之がそう言っていたことは覚えている。
だからといってただ笑っただけで誘ったように言われるのは心外だった。
けれどそれを伝えようと開いた由梨の唇を突然、隆之の唇が塞いだ。
「んんっ…!」
そして信じられないほどの荒々しさでもって由梨を圧倒してゆく。
由梨が言おうとしたこともなにもかもを食べ尽くされて、由梨の頭の中は空っぽになってゆく。
由梨の思考が霞んでなにも考えられなくなった頃、ようやく隆之が離れた。
けれどホッと安心したのも束の間のこと。
くたりと力が抜けてしまった由梨を突然隆之が抱き上げた。
「きゃっ!た、隆之さん?!」
驚き慌てふためく由梨をよそに涼しい顔の隆之は、ズンズンと部屋を横切り、綺麗に片付けられてほとんど物が乗っていない社長の為の机の上に由梨を座らせた。
「っ…!た、隆之さん!?…な、なに??」
予想を遥かに上回る隆之の行動についていけない由梨は、机の上で身をよじらせる。
けれど隆之に両手を囲い込むようにつかれてしまい身動きが取れなくなってしまう。
「俺は社長で君は秘書だ。…古今東西、社長と秘書が愛し合う場所は社長室と決まっている。」
信じられないことを言って隆之は、由梨の頭上で優雅に微笑んでいる。
由梨は慌てて彼の鍛えられた胸に両手をついて押し戻そうとした。
「だ、だめです!社長…。」
彼は誰もが認めるこの会社のリーダーだ。
こんなことをしていいはずがない。
それを思い出してほしくてわざと役職で呼んでみる。
けれどそんな由梨の必死の抵抗を歯牙にも掛けず、隆之はペロリと唇を舐めた。
そしておもむろにネクタイを緩める。
「大丈夫だ、誰も来ないよ。…君が鍵をかけてくれたんじゃないか。」
「なっ…!」
由梨は声にならない声をあげる。
もちろん由梨はそんなつもりで鍵をかけたのではない。
さっきは隆之を夜の街へ行かせまいと必死だったのだ。
「私…!そんなつもりじゃなかったわ…。」
涙目になり必死首を振る由梨を見て、隆之が喉の奥でくっくっと笑った。
「そうか?」
そう言っておかしそうに笑い続ける隆之から怪しい空気が消えた。
ようやくからかわれたのだと気がつき由梨はホッと胸を撫で下ろす。
相変わらず隆之が放つ壮絶に怪しい色気は心臓に悪い。
もうっと言って由梨は身をよじる。
けれど、相変わらず机と隆之の腕に挟まれてそこから出ることは叶わなかった。
「…初めてわがままを言う君は、とても美しかった。こんなに可愛らしいヤキモチを見られるなら、夜遊びも悪くはないな。」
愉快そうに軽口を言う隆之を由梨は軽く睨む。
「隆之さんったら…。」
美しい女性を隣にはべらせて酒を飲む隆之の姿がまた脳裏に浮かんだ。
「ほら、こんなに頬を膨らませて。」
隆之は微笑んで由梨の頬をつついた。
そして一瞬真顔になって眉を寄せた。
「別に誰かと飲みたかったわけじゃない。…君のいない屋敷に、帰る気がしなかったんだ。」
切ない色を帯びたその声音に由梨の胸が締め付けられる。
「私…。」
由梨の視界が再びにじんだ。
「私…。ぐずぐずと答えを出せなくてごめんなさい…。」
自分の気持ちだけで精一杯で隆之がどんな気持ちでいるかまでは思いやることができていなかった。
それなのに子供っぽい嫉妬までしてしまったのが恥ずかしい。
「気にすることはない。」
由梨の頭に大きな隆之の手のひらの温もりが乗る。
それがとても心地がいい。
隆之がふわりと笑った。
「こんなに情熱的な由梨の告白が聞けたんだ。…もうそれだけでいい。」
そう言った隆之の頬に由梨は手を添える。
少し高い隆之の体温が手を通して由梨に伝わる。
彼と出会えたのは、由梨にとって奇跡にも近い幸運だ。
たとえ始まりは打算と計算にまみれていたとしても。
彼なくしては由梨は自由を勝ちとることはできなかったし、おそらく本当の愛が何かすら知らずに生涯を終えただろう。
「隆之さん、愛してるわ。」
そんな言葉では言い尽くせないくらい。
「愛してるわ…。」
由梨はゆっくりと近づく隆之の唇に愛おしげに自分の唇を重ねた。
そして二人は誓いのキスを交わす。
ここから始まる。
真実(ほんとう)の二人の幸せな結婚生活が。
唇が離れるのを名残惜しそうに見つめる由梨に、隆之は極上の笑みを浮かべて囁いた。
「帰ろう、由梨。俺たちの家へ。」
その温もりが涙に濡れた頬に心地良くて由梨はうっとりと目を閉じて頬ずりをした。
その感触をゆっくりと堪能してから瞳を開くと、なぜか難しい顔で見下ろしている隆之と目が合った。
心なしか彼の瞳の色が濃くなっているように思った。
「…隆之さん?」
自分は何か間違えたのだろうかと由梨が首を傾げたとき、隆之が深いため息をついた。
そして情欲の炎を灯した視線で由梨を射抜くように見る。
「…俺は君の笑顔に弱いと言っただろう?その俺に、そんな笑顔を見せておいて、まさかあれだけのキスですむと思っていないよな?」
思ってもみなかった隆之の言葉に由梨は耳まで真っ赤に染まる。
「え…?あっ、そ、そんなつもりは…。」
その官能的な響きを纏った声音に、由梨は慌てて首を振った。
「そんなつもりは?なかった?」
優しく聞き返す隆之に由梨はこくこくと頷く。
たしかに以前隆之がそう言っていたことは覚えている。
だからといってただ笑っただけで誘ったように言われるのは心外だった。
けれどそれを伝えようと開いた由梨の唇を突然、隆之の唇が塞いだ。
「んんっ…!」
そして信じられないほどの荒々しさでもって由梨を圧倒してゆく。
由梨が言おうとしたこともなにもかもを食べ尽くされて、由梨の頭の中は空っぽになってゆく。
由梨の思考が霞んでなにも考えられなくなった頃、ようやく隆之が離れた。
けれどホッと安心したのも束の間のこと。
くたりと力が抜けてしまった由梨を突然隆之が抱き上げた。
「きゃっ!た、隆之さん?!」
驚き慌てふためく由梨をよそに涼しい顔の隆之は、ズンズンと部屋を横切り、綺麗に片付けられてほとんど物が乗っていない社長の為の机の上に由梨を座らせた。
「っ…!た、隆之さん!?…な、なに??」
予想を遥かに上回る隆之の行動についていけない由梨は、机の上で身をよじらせる。
けれど隆之に両手を囲い込むようにつかれてしまい身動きが取れなくなってしまう。
「俺は社長で君は秘書だ。…古今東西、社長と秘書が愛し合う場所は社長室と決まっている。」
信じられないことを言って隆之は、由梨の頭上で優雅に微笑んでいる。
由梨は慌てて彼の鍛えられた胸に両手をついて押し戻そうとした。
「だ、だめです!社長…。」
彼は誰もが認めるこの会社のリーダーだ。
こんなことをしていいはずがない。
それを思い出してほしくてわざと役職で呼んでみる。
けれどそんな由梨の必死の抵抗を歯牙にも掛けず、隆之はペロリと唇を舐めた。
そしておもむろにネクタイを緩める。
「大丈夫だ、誰も来ないよ。…君が鍵をかけてくれたんじゃないか。」
「なっ…!」
由梨は声にならない声をあげる。
もちろん由梨はそんなつもりで鍵をかけたのではない。
さっきは隆之を夜の街へ行かせまいと必死だったのだ。
「私…!そんなつもりじゃなかったわ…。」
涙目になり必死首を振る由梨を見て、隆之が喉の奥でくっくっと笑った。
「そうか?」
そう言っておかしそうに笑い続ける隆之から怪しい空気が消えた。
ようやくからかわれたのだと気がつき由梨はホッと胸を撫で下ろす。
相変わらず隆之が放つ壮絶に怪しい色気は心臓に悪い。
もうっと言って由梨は身をよじる。
けれど、相変わらず机と隆之の腕に挟まれてそこから出ることは叶わなかった。
「…初めてわがままを言う君は、とても美しかった。こんなに可愛らしいヤキモチを見られるなら、夜遊びも悪くはないな。」
愉快そうに軽口を言う隆之を由梨は軽く睨む。
「隆之さんったら…。」
美しい女性を隣にはべらせて酒を飲む隆之の姿がまた脳裏に浮かんだ。
「ほら、こんなに頬を膨らませて。」
隆之は微笑んで由梨の頬をつついた。
そして一瞬真顔になって眉を寄せた。
「別に誰かと飲みたかったわけじゃない。…君のいない屋敷に、帰る気がしなかったんだ。」
切ない色を帯びたその声音に由梨の胸が締め付けられる。
「私…。」
由梨の視界が再びにじんだ。
「私…。ぐずぐずと答えを出せなくてごめんなさい…。」
自分の気持ちだけで精一杯で隆之がどんな気持ちでいるかまでは思いやることができていなかった。
それなのに子供っぽい嫉妬までしてしまったのが恥ずかしい。
「気にすることはない。」
由梨の頭に大きな隆之の手のひらの温もりが乗る。
それがとても心地がいい。
隆之がふわりと笑った。
「こんなに情熱的な由梨の告白が聞けたんだ。…もうそれだけでいい。」
そう言った隆之の頬に由梨は手を添える。
少し高い隆之の体温が手を通して由梨に伝わる。
彼と出会えたのは、由梨にとって奇跡にも近い幸運だ。
たとえ始まりは打算と計算にまみれていたとしても。
彼なくしては由梨は自由を勝ちとることはできなかったし、おそらく本当の愛が何かすら知らずに生涯を終えただろう。
「隆之さん、愛してるわ。」
そんな言葉では言い尽くせないくらい。
「愛してるわ…。」
由梨はゆっくりと近づく隆之の唇に愛おしげに自分の唇を重ねた。
そして二人は誓いのキスを交わす。
ここから始まる。
真実(ほんとう)の二人の幸せな結婚生活が。
唇が離れるのを名残惜しそうに見つめる由梨に、隆之は極上の笑みを浮かべて囁いた。
「帰ろう、由梨。俺たちの家へ。」