政略結婚は純愛のように~狼社長は新妻を一途に愛しすぎている~
結局、由梨と加賀が話し込んでいる間に雪が激しくなり由梨は加賀の屋敷に泊まることになった。
加賀との会談で少なからず混乱した由梨は本心では歩いてでも自宅へ戻りたいと思ったけれど、危険だと言われては仕方がない。
先代の頃から加賀家で働いているという優しそうな秋元という女性に案内された客間の布団の中で、由梨は窓の外を見つめていた。
断熱に優れた加賀家の窓を通してもヒューヒューと吹雪く音が聞こえる。
この街は好きだけれど、この風の音にはいつまでたっても慣れない。
普段は閉じ込めている由梨の心の中にある孤独が無理矢理起こされるようで、眠れなくなる。
由梨は小さくため息をついてそっと部屋を出た。
こうなるとなかなか眠れないということは経験上知っている。
暖かい飲み物でももらえないだろうかと思った。
「…どうかしたのか。」
台所へ向かう廊下で声をかけられた。
振り向くと、薄暗い中に加賀がいた。
「勝手にうろうろしてすみません。…眠れないので、飲み物をもらえないかと思いまして……。」
慌てて由梨は頭を下げた。
そして加賀が部屋着であることに気がつき、気恥ずかしい気持ちになる。
スーツ姿以外の彼を見るのは初めてだった。
五年間も側で働いていたのに、今日一日だけで今までの何倍も知らなかった加賀の一面を知った。
薄暗い中で加賀が微笑んだ気配がした。
「おいで。」
そう言って台所へ向かう。
由梨も後を追った。
台所に着くと加賀は由梨に、
「ホットミルクでいいか。」
と確認して、自ら作り始めた。
その仕草があまりにも自然で、固辞することもせずに由梨はカウンターの椅子でそれを見つめている。
いつもは書類をめくる大きな男らしい手がくつくつと沸きそうで沸かないミルクを優しくかき混ぜる。
やがて、蜂蜜が入ったシナモンパウダーまで添えてある完璧なホットミルクが出来上がる。
「あ、ありがとうございます…。」
カップを受け取りながら、由梨は不思議な気持ちになった。
今日の朝までは考えもしなかった。
加賀とこのような時間を共有するなんて。
ふーふーと冷ましてから、ミルクを口に含むと、暖かさが胸いっぱいに広がった。
「おいしい…。」
呟いて思わず笑顔になった由梨を加賀も笑顔で見ている。
政略結婚なんて、ひとかけらの情もかわし合わない冷たいものだと思っていたけれど、それだけでもないのかもしれないという思いが浮かんだ。
加賀との会談で少なからず混乱した由梨は本心では歩いてでも自宅へ戻りたいと思ったけれど、危険だと言われては仕方がない。
先代の頃から加賀家で働いているという優しそうな秋元という女性に案内された客間の布団の中で、由梨は窓の外を見つめていた。
断熱に優れた加賀家の窓を通してもヒューヒューと吹雪く音が聞こえる。
この街は好きだけれど、この風の音にはいつまでたっても慣れない。
普段は閉じ込めている由梨の心の中にある孤独が無理矢理起こされるようで、眠れなくなる。
由梨は小さくため息をついてそっと部屋を出た。
こうなるとなかなか眠れないということは経験上知っている。
暖かい飲み物でももらえないだろうかと思った。
「…どうかしたのか。」
台所へ向かう廊下で声をかけられた。
振り向くと、薄暗い中に加賀がいた。
「勝手にうろうろしてすみません。…眠れないので、飲み物をもらえないかと思いまして……。」
慌てて由梨は頭を下げた。
そして加賀が部屋着であることに気がつき、気恥ずかしい気持ちになる。
スーツ姿以外の彼を見るのは初めてだった。
五年間も側で働いていたのに、今日一日だけで今までの何倍も知らなかった加賀の一面を知った。
薄暗い中で加賀が微笑んだ気配がした。
「おいで。」
そう言って台所へ向かう。
由梨も後を追った。
台所に着くと加賀は由梨に、
「ホットミルクでいいか。」
と確認して、自ら作り始めた。
その仕草があまりにも自然で、固辞することもせずに由梨はカウンターの椅子でそれを見つめている。
いつもは書類をめくる大きな男らしい手がくつくつと沸きそうで沸かないミルクを優しくかき混ぜる。
やがて、蜂蜜が入ったシナモンパウダーまで添えてある完璧なホットミルクが出来上がる。
「あ、ありがとうございます…。」
カップを受け取りながら、由梨は不思議な気持ちになった。
今日の朝までは考えもしなかった。
加賀とこのような時間を共有するなんて。
ふーふーと冷ましてから、ミルクを口に含むと、暖かさが胸いっぱいに広がった。
「おいしい…。」
呟いて思わず笑顔になった由梨を加賀も笑顔で見ている。
政略結婚なんて、ひとかけらの情もかわし合わない冷たいものだと思っていたけれど、それだけでもないのかもしれないという思いが浮かんだ。