この雪の下で春を待つ

「リーク、お外、雪合戦…」

「ダメだって言ってるだろう?今頃街でチフス患者が増えてるんだ。ここにだって何人流れて来るか…」

服の裾を引っ張り、鉄格子の外を指すフーにリークは何度目かもわからない言葉を返す。

その度にフーは不満そうに頬を膨らませて無言の抗議を続ける。だが、そんな無言も今では随分短くなり3分後にはまたお外と言って鉄格子の外を指すのだ。

中々諦める気配のないフーにリークはため息をついて、フーの頬を引っ張る。

「フー、俺何回ダメって言った?」

「いっぱい」

「分かってるならダメだ。絶対ダメ」

いくらフーが言ってもこれだけは譲れなかった。外に出て、孤児に触れればそれで感染を疑う。それくらいのつもりでいなければ、とてもじゃないが命なんて守れない。

この冬を越すのが難しくなるのだ。
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