この雪の下で春を待つ

孤児だろうが、先住民だろうが1発殴り飛ばしてやろうと心に決めて戸を開けたリークだが、その瞬間言葉を失った。

鉄格子から雪を投げ込んでいたのはジーンだった。

だが、どうも様子がおかしい。目が血走って、両手が血に染まっている。それなのにジーンは雪を投げ込むことをやめないのだ。

リークは警戒しながら、彼の様子に気づいていないことにした。

「あのさ、部屋がべちゃべちゃになるんだけど」

「っ!?リーク、貴様」

そこでようやくリークの存在に気が付いたジーンは、鋭くリークを睨みつける。

その顔はもう何日も眠っていないようで、目の下のクマが妙に映えている。まるで狂気に侵された人そのものだ。
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