この雪の下で春を待つ
「返せ…盗んだ薬を返せ!!」
「俺は薬に手を出さない」
「嘘だ!」
「じゃあ聞くけど、何かもわからない薬に手出して死んだ孤児が何人いると思う?」
そこでジーンは口を閉ざした。
正確にはリークの睨みに、囚われているのだ。普段なら絶対ありはしない。そんなことが起きていた。
「俺が何人そいつらを見て来たか知ってるか?俺が薬にだけは手を出さないこと知ってるだろ。だいだい、ダイの家には薬と同じ場所に猛毒のビンがあって、ラベルも張ってないんだぜ?俺に薬や薬草の知識はない。わざわざ危険に飛び込まないよ」
リークの言葉は全て真実で、ジーンは絶望したようにその場に座り込んだ。
リークは冷めた目つきでジーンを睨み、舌打ちをして修道院の中に戻ろうと背を向ける。