この雪の下で春を待つ

「薬はない。本当に盗んでないんだ」

リークはジーンを刺激しないように慎重に口を開く。

ジーンの様子に変化はない。ただ、銃口は完全にリークの心臓に向けられている。

無言が辺りを支配する。

「昨日、言ったな。孤児は人間じゃないのかと、俺たちが散々孤児を見殺しにしてきたと」

沈黙を破ったのはジーンだった。リークは頷いてわずかに足を後ろに引く。

一か八かだ。やってダメならおとなしく雪に埋もれよう。

「確かにその通りだ。俺たちだけが生き残るなんて変な話だ。…だけど」

不意に、猟銃が雪の上に落ちる。愕然としたリークの目の前の視界が不意に開ける。

視線を下に向けると、ジーンが自分に土下座をしていた。
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