この雪の下で春を待つ
それでも、1番驚いているのはこんなにも自分が必死になっていることだった。
フーが火のついたロウソクを燭台に乗せて、机の上に置く。少しだけ手元が明るくなった。
「ありがと、フー」
労うように頭を撫でてやると嬉しそうに笑って、また邪魔をしないように手元を覗き始めた。リークもすぐに作業に戻る。
やがて日が暮れて、辺りは真っ暗になる。手元のロウソクだけが頼りだ。
火の眩しさに苦戦しながらも、間違えないように慎重に、手早く紋様を描いた。
「リーク、大丈夫?」
「…雪持ってこれる?」
「うん」
背後で地下の部屋を出て行く音が聞こえた。
瞼を閉じた世界は真っ暗なのに、白や赤っぽい光が浮いていた。目をやられた。瞬きもせずに作業していたせいで、目はひりひりと痛み焼けてしまった。
しばらくすれば治るが、ズキズキする痛みと熱はそう簡単に引いてくれそうにない。
片手で目を押さえてフーが戻ってくるのを待っていると、小さなものが隣から抱きついてきた。