この雪の下で春を待つ

「リーク」

「これ?ありがと…ちょっと休めば治るから。心配しないで」

おそらく心配そうにじっと自分を見つめているのだろうと予想がついて、手探りで頭を撫でた。

袋に入った雪をそのまま目に押し付ける。ひんやりとする刺激が心地よく、ズキズキとした痛みと熱が徐々に引いて行った。

中の雪が溶けてなくなってしまうまで、そうしていると痛みはなくなっていた。瞼を上げてフーを見ると、自分をじっと見つめていた。

「リーク、痛い?」

「もう痛くない。フー、寝な。まだ終わりそうにない」

「リーク、一緒!」

リークが寝ないと寝ない。そう言う事らしい。

頑ななフーに少し苦笑して、リークは作業に戻った。

それから何時間経ったのだろうか、リークはようやく出来た紋章に誤りがないか確認して、ほっと肩の力を抜いた。

足元には眠気に耐えられなくなって途中で睡魔に負けたフーが転がっている。

毛布を握りしめたまま、転がっているフーに笑みを浮かべて、ロウソクを吹き消すと片づけも何もかもそのままにして、フーを抱き枕にしてあっという間に眠りに落ちた。
< 119 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop