この雪の下で春を待つ
裏の崖には、ふもとの街の住民がいた。確か、薪割りのジーンと呼ばれている、木工店の男だ。
ジーンはリークに気が付くと、いたいたと口角を上げる。
「またブタから奪ったんだって?」
「懲らしめに来たわけ?」
「まさか、何であんなブタのために俺が仇を討たなきゃなんねぇんだ。お前の方がましだ」
ジーンの言葉は本心で、ボソッと聞こえてきたのは「早く出ていかねぇかな」といううんざりした言葉だ。だが、すぐに笑みを浮かべて見つめてきた表情は今出た言葉が嘘のように人のいい顔をしている。
「言っとくけど、俺らはお前の腕だけは買ってるんだぜ」
リークは興味なさそうに、足をぶらぶらさせる。それに気づいたジーンは、リークの機嫌が悪くなる兆候を見て取って慌てて本題を持ち出す。