この雪の下で春を待つ
翌日、目が覚めると既に日が昇りつつあり空が明るくなっていた。
リークは紋様を描いたコップを傍にあった布で包むと、ぐっすり眠っているフーを起こさないように地下の部屋を抜け出す。
チフスに溢れる街に行くなんてどうかしてる。だけど、これを届けるには行くしかない。
どうしてそんなに必死になる?
心の中で自分自身に問うてくる声。
そんなもの知るか。体が勝手に動くんだ。
報酬も何も約束していない。殺されかけた。そんな奴のためにこんなに必死になっている自分が1番わからなかった。
修道院の外に出て、丘の眼下に見える街を見下ろす。
雪に閉ざされたそこは、小さな明かりがわずかに灯るだけ。心なしか、以前見た街の風景より寂れて見えた。