この雪の下で春を待つ
どうしてこんなに苦しくなるのか分らない。だけど、命のために動くのも悪くないかもしれない…。
「間に合ってくれ…」
独り言のようにつぶやいて、街へ駆け出す。
降り積もった雪をかき分けて進む。街に近づくにつれ、雪は浅くなっていったがその頃にはもう息が上がっていた。
街はもぬけの殻。あれほど溢れていた孤児は一体どこへ行ってしまったのだろう。死んでしまったのか、それとも…。
先住民たちの姿もない。彼らは家に籠っているのか、だけどところどころ明かりの灯っていない家もあって、それが不気味だった。
出来るだけ民家へ視線を向けずに、リークはジーンの家へと急いだ。
ジーンの家は明かりが灯っていた。閉ざされた木製のドアを少々乱暴に殴りつける様に叩く。
「ジーン、リークだ!開けてくれ!!」
どんどんと戸を叩き続けていると、やがて手の甲が赤くなり血が滲み出した。それでもリークは戸を叩き続ける。