この雪の下で春を待つ

 浅く雪が降った街の街路地を急ぎ足で進む。
フーに何も言わずに出てきてしまっている。きっと心配しているだろう。戻ったら泣きしゃぐっているフーの姿が容易に想像できて、リークは軽く笑みを浮かべた。

吐いた息が白い。誰もいない道はこの街の孤立を際立てているようで、リークはとにかく急いで進む。

「リーク!!」

「ッ!?フーなんで…」

「後ろ!!」
突然裏路地から飛び出して来たフーは自分の背後を指す。

振り返るよりも早く、その場を離れてフーの前まで走る。そのままの勢いでフーを抱きしめ、振り返った。

「ッチ…」

「またお前かよ」

そこにいたのは、随分姿を見ることがなかった奴隷商のポールの姿だった。

リークはフーを守るように前に出て、ポールを睨みつける。
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