この雪の下で春を待つ

「奴隷に出来る孤児がいなくなったから俺たちを狙ったわけ?」

「ッは、チフスなんかに罹って死んじまう弱い孤児なんて売れねぇんだよ」

「お前がろくに世話もしないで置いておくからだろ」

呆れる様に、だが湧いてきたのは怒りだった。

拳を固めながらも、相手がチフスに罹った孤児と接点を持っていた以上、触れられるわけにはいかない。

リークは逃げる体制を作りながらも、ポールを睨むをやめなかった。

「俺もフーもお前の金になってやるつもりはない。俺たちは自分の足でここを出て行くんだ!」

「待て!!」

リークはそう言い切ると、フーの手を握って駆け出した。ポールはもちろん追ってきたが、彼に追いつかれるはずもなく逃げ切れる。…はずだった。
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