この雪の下で春を待つ

2人ががりでやっと少しだけ口を広げたトラバサミの歯の間から、新たな傷を負うのもためらわずに足を引き抜いたリークは、それを放り捨てて立ち上がろうとしたが立ち上がれずに再び雪の上に倒れる。

骨がやられたのか、足は真っ青になっている。

「リーク」

「フー、早く逃げろ…捕まったら逃げれないぞっ!」

「いやだ!リーク…一緒」

どれだけ言ってもフーは離れようとしない。しがみついてくるフーに表情を歪める。

だけど、動けと叱咤する足は言うことを聞かない。立ち上がる事さえ出来ないリークが逃げ出すことは出来ない。

「ざまあないな。コソ泥が」

振り返ると、にやにやと笑ったポールが自分たちを見下ろしていた。

抱きついてきたフーを抱きしめ返すが、何も反撃できない自分が恨めしく、ポールを睨みつけることしか出来なかった。
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