この雪の下で春を待つ
ポールはそんなリークの睨みをもろともせずに、笑みを浮かべたまま手を伸ばしてきた。
「やめとけ、奴隷商」
ポールの手がリークを掴む寸前でかけられた声に、驚いて声のした方を見る。
すると、そこにはたばこを片手に持ったダイがこちらをじっと見ていた。リークもフーも驚く中、ダイは煙を吐き出して、ポールを睨みつけた。
「そいつらには手出すんじゃねぇよ」
「っは、医者が何言ってやがる。俺はこの街の美化に協力してやってるんだぜ?」
「美化…ね。病原菌を撒き散らしてこの街を壊滅状態に追い込んでやがるお前が、とんだ口を叩くもんだ」
まだ半分以上ある煙草を地面に捨てて、それを踏み潰して消火する。ダイはポールを睨んだまま、コートのポケットに手を突っ込む。