この雪の下で春を待つ
「この花瓶に名前と花の絵を刻んでほしいんだ」
「へ~、何。赤ん坊でも生まれるの?」
「ああ、その子が生まれる記念にな。アンジュと刻んでくれ」
「天使とはまた大層なお名前で。じゃあ花はスノードロップかな」
「いいね、報酬は銀貨3枚でどうだ。柄の出来次第では、更に温かい夕食ってのはどうだい?」
リークは少し目を見張って、首をかいた。
「随分豪華だね。やってもいいけど」
「交渉成立だな」
そう言うと、ジーンは布に包まれた花瓶を投げて寄越した。
受け取った花瓶がカシャンと音を立てたことに気が付いたリークは、布を剥いで花瓶を取り出す。何の飾り気のない花瓶の中には銅貨が10枚入っていた。