この雪の下で春を待つ

修道院を出たフーは、振り返って倒壊しかけた修道院を見上げる。

どこに行く?どこにも…行く場所なんてないよ。

居場所をくれた。1人ぼっちから助けてくれた。今だって、助けてくれた。

わかっていた。リークがチフスに罹ってしまったことくらいわかっていた。

それなのに…なんで逃げ出しちゃったの…?

「おい、チビ何してる」

「ッ!?…お医者さん」

振り返れば、いつも通り厚いコートをまとったダイが自分を見降ろしていた。

不審な目で自分を見降ろしてくるダイのコート両手でつかむ。いかぶるダイを見上げたまま、フーは震えた声で何とか言葉を繋ぐ。
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