この雪の下で春を待つ
「リーク…チフス…罹った…」
「何だと…」
「助けて…助けてよ!!リークを助けて!」
言葉に出すと同時に、頬に涙がつたう。
流れる涙をそのままにフーはダイのコートを掴んだまま、何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
助けてとただそれだけを…。
「チビ、薬がない。だから助けられないんだ」
「薬…?」
「そうだ。この辺りの山に昔からある木の実がチフスに効くと聞いたことがある。だけど、俺はその木の実を知らねぇ。それにそれは副作用が強すぎて危険なんだ」
だから、無理なんだ。そう締めくくったダイは、フーの涙を拭きとる。フーは涙が途切れ、ただ呆然とダイを見上げた。