この雪の下で春を待つ
あれがあれば、リークを助けられるだろうか。
そう言えば、冬になると予防って言って絶対に1粒飲まされていた。治療には2粒、飲むのは1回だけ。
黙り込んだフーにダイは眉を潜める。
「おい、チビ」
「薬、あったら、リーク…治る?」
「っえ?」
フーの言葉にダイは目を丸くする。返事を待たずに、フーは山の方角を見つめる。
「リーク、助けなきゃ…」
「ッ!?おい待て、フー!!」
ダイの制止を振りほどいてフーは街とは反対方向、山の方角へ走り出す。
ここが整備の利いた道ならすぐに追いつけただろう。
だが、ここは踏み場を誤れば雪に埋もれてしまう。そんな場所をフーは意図も簡単に走り、あっという間にダイが追い付けない場所まで行ってしまった。
待っていて、絶対に助けるから…。
1人駆け出した少女が目指す先にあるのは荒れ果てた山。
リークを助ける。
ただそれだけを胸に秘めて…。