この雪の下で春を待つ
6.約束破り

息が絶え絶えになりながらもたどり着いたのは、簡素に作られた墓。

フーはそこに倒れ込むように座ると、乱れた息を必死に整える。息が整わないうちに顔を上げて、墓石を見る。

「まんま…ごめんなさい」

約束守れない…。

「リークを助けたい。フーね、リークいなくなっちゃうの…いや」

だから、ごめんなさい。これで約束を破るのは最期にするから、見逃してください…。

フーはかつて母と暮らした洞窟に入る。

そこはまだ、獣の臭いが立ち込めていて母の臭いは他の生き物からこの場所を守り続けた。

その洞窟の最奥の壁を少し掘る。すると、中から布の袋が顔を見せた。それを引っ張り出して、中身を見る。

手のひらに乗るサイズである袋の中には、対チフス用の木の実が入っていた。発芽も、腐ってもしていない。なんとか使えそうだ。

ほっと息を吐いて、袋を抱きしめる。

これでリークを助けられる。安心しているフーの背後で、動物の鳴き声がした。
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