この雪の下で春を待つ
[オオカミの娘か]
「ッ!?…狐さん…」
振り返ると、洞窟の入り口に1匹の老いた狐がいた。フーは袋を握りしめ、狐に向き合う。狐は洞窟の中に入りながら、鳴いた。
[それはお前の母がお前を守るために集めた物。それをどうするつもりだい]
「リーク…死んじゃう。だから」
言葉を続ける前に、狐がそれを遮るように鋭く鳴く。
[人間にそれの存在を教えるな。それは森の知恵]
「わかってるよ!…でも」
これがなきゃリークを助けられない。
狐を見ていられなくなって、フーはうつむいた。
動物たちが怖がっているのはわかっている。またここを荒らされるのが彼らは怖いのだ。
1度は人間の手に落ちたこの山。彼らは居場所を追われ、ある者は食糧に、ある者は毛皮として狩られ死んでいった。
だから、この山がもう1度人間の手に渡ることを動物たちは恐れ、山が彼らの手に戻ってからも、彼らは息を潜めて生活し続けている。