この雪の下で春を待つ
黙り込むフーにそっと近づいた狐は、フーの目の前に座って顔を覗き込んだ。
[オオカミの娘、お前は人間だ。だけど、お前はオオカミが命がけで育てたかわいい子供。それは私たちも知っているよ。だから、1つだけ約束だ。この木の実は他言しない。この山で採れることも、この木の実の存在もだ。いいね]
狐の言葉に顔を上げたフーは、袋をぎゅっと握る。
頷いたフーの額に前足を当てた狐はしばらくそうして、何事もなかったように立ち上がって洞窟の外に出る。
これは森の約束事を取り決めるときに行われるもの。フーも母に何度かやられたことがある。