この雪の下で春を待つ
リークがエリア00で生き延びることができたもう一つの要因は、たびたび住人から依頼されるガラス装飾だ。
花瓶や窓、コップに水槽…ありとあらゆるガラスに彫刻刀の刃を当て、傷をつけ絵を描く。その器用さだけは住人たちの間では評判で、ああしてこっそり依頼に来るのだ。
この技術は父親譲りだ。
もともとリークの父親は木彫りの職人で、街を出て行く時、父親は5本の彫刻刀と、廃墟となった修道院のこの地下室の場所を与えて去って行った。
花瓶に彫刻刀の刃の先を当てて輪郭を描く。キーキーと嫌な音が出るのは仕方のないことで、耳栓をしていなければとてもじゃないが出来ないのだ。