この雪の下で春を待つ

 …寒い。

どうしてこんなに寒いのだろう。自分はもう死んだのか?

目を開くとそこは漆黒の闇。前も後ろも、上も下もわからない漆黒の闇が永遠と続く場所。

ここが天国だって?天国って温かくないのか?

ふっと苦笑いを浮かべる。そもそも自分が天国に行けるんだろうか。

盗みをして、約束を破った非道な自分に、天国に行ける権利などあるのだろうか…。

もしかしたらここは地獄なのかもしれない。

ああそれなら、少し納得できるかな。地獄って、灼熱地獄を予想していたけど、案外極寒なのかもしれない。

どうでもいいことを考えていた頭が急に冴える。不意にうつむいて、少女の顔を思い浮かべる。
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