この雪の下で春を待つ

仕方なく、パンを小さくちぎって口の中に入れてやる。

それを噛もうとしないフーに、リークはパンを自分の口の中に入れて少し噛むと、それをフーの口の中に押し込む。表情を歪めたが、飲み込んだフーに少しほっとする。

それを繰り返してパン1つを食べさせ終わると、フーの体を横たえて真っ赤な毛布をかける。完全に意識を失っているフーの頭をそっと撫でる。

「フー、どうしたの?」

いつもみたいに笑ってよ。起きて外でまた雪合戦しよう。それに、あと少しなんだよ?

もうすぐ雪が溶ける。そしたらここを出て行くんだよ?

ほら、早く起きないとここで遊べるのあと少ししかなんだから…。

フーいつも遊びたいって言ってるじゃないか、なのになんで…なんで…

起きてくれないの…?

その日から、フーは目を覚ましてもリークを見ていないようだった。

いつもぼんやりとして、食事も自力では取れなくて…。懸命に世話を焼くリークは日に日に目を覚まさなくなっていくフーにいつも語りかけた。
< 166 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop