この雪の下で春を待つ
奴隷商の馬車が寂れた街の道を進む。
その隣をすれ違い、歩く少年は首に青の布を巻き真っ赤な毛布に包まれた少女を抱えて歩いていた。
この冬、流行ったチフスで命を落とした先住民の数は15。
ジーンの娘、アンジュは奇跡的に一命を取り留めたものの、看病で疲弊した母親がチフスに罹りあえなく亡くなった。
彼が向かう先は、この街の唯一の医者であるダイの家。
閉ざされた木製の戸を叩く。すると中から現れた男は少年の姿を見ると戸を大きく開ける。
「リークどうした…ッ!?」
ダイはリークが抱えている少女の姿を見ると、くわえていた煙草を地面に落としてしまう。
愕然としたまま、眠っている少女を見つめていたが我に返って2人を中に入れる。
すぐに布団を引いて、そこに少女を寝かせる様にリークに言うと、少女の顔に白い布をかけた。