この雪の下で春を待つ

それから更に3日後、リークはジーンの家を訪ねた。約束の日より3日早いことにジーンは驚いた様子で、リークを家の玄関先に入れる。

「随分早いんだな」

「まあね、ここの冬は寒すぎるんだよ」

暗に外に出ていないと言っているようなリークに、ジーンもそうだなと軽く相槌をうった。

だが、そう言いつつも布に包まれた花瓶を取り出している。

何の飾り気のなかった花瓶はすっかり面影を失くしている。ガラスにつけられた傷は見事に花を形作り、その花の中心には「Ange」と刻まれている。フランス語で天使を意味する単語だ。

ジーンは予想以上の出来栄えに少々目を見張る。リークは乱雑に髪をかいてジーンを見上げた。

「それで、出来栄えはどうなんだよ」

「…お前、盗人じゃなくてこっちを専門にしろよ。勿体ねぇな」

「余計な世話だ。大体、お前らが勝手に依頼してくるからこっちだってやってるんだよ」
< 20 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop