この雪の下で春を待つ
リークはもう一度目を閉じて、開く。
もう日が昇っている。早く出発しなければ…背を向けた墓にもう一度だけ振り返る。
そこにはもう誰もいなかったが、リークは墓に向かって笑いかける。
「いってきます」
そう告げて、リークは歩き出した。
この日、親に捨てられて4回の冬を越した孤児の少年は街を出た。
誰にも気づかれることなく、ひっそりと姿を消した少年は地平線のその先を目指して歩き出す。
目的は2つ。
1つは春を探しに行くこと。
もう1つは両親を見つけ出し、見返すこと。
少年は歩き続ける。その先に地獄があったとしても、約束を果たすために歩き続ける。
彼の首に巻かれた青い布が風に揺れてはためいた。
『この雪の下で、春を待つ』完