この雪の下で春を待つ
夫は妻だけを連れて家を出る。
子供には、お留守番を押し付けて。子供の代わりなど、妻さえいればいくらでも出来る。
こんな交通手段さえもおぼつかない街から、子供を連れ出す金は持ち合わせてなどいない。
素直な子供は、言いつけを守って残される。両親が帰って来ないことも知らずに。
やがて腹の空いた子供は何もない家を捨て、街を彷徨う。そこには同じような境遇の子供。
「キミも捨てられたんだ」
「まだ捨て子が残っていたのかい、勘弁してくれよ」
ようやく知る、自分が捨てられたということに。
助けてくれる者はいない。
その街に残ったのは彼らのような捨て子と、先住民しかいないのだから。先住民たちも大勢の捨て子を養う余裕などない。
見て見ぬふり、欲のためにやって来たお前たちが悪い。自分たちには関係ないと言わんばかりに。