この雪の下で春を待つ

夫は妻だけを連れて家を出る。

子供には、お留守番を押し付けて。子供の代わりなど、妻さえいればいくらでも出来る。

こんな交通手段さえもおぼつかない街から、子供を連れ出す金は持ち合わせてなどいない。

素直な子供は、言いつけを守って残される。両親が帰って来ないことも知らずに。

やがて腹の空いた子供は何もない家を捨て、街を彷徨う。そこには同じような境遇の子供。

「キミも捨てられたんだ」

「まだ捨て子が残っていたのかい、勘弁してくれよ」

ようやく知る、自分が捨てられたということに。

助けてくれる者はいない。

その街に残ったのは彼らのような捨て子と、先住民しかいないのだから。先住民たちも大勢の捨て子を養う余裕などない。

見て見ぬふり、欲のためにやって来たお前たちが悪い。自分たちには関係ないと言わんばかりに。
< 3 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop