この雪の下で春を待つ
2.幸せを分けて
―俺死んだのかな…
広がっている暗闇はどこまでも続いていて、先が見えない。自分の手を目の前にかざしても何も見えなかった。
―くっそ…あんな奴に
エリア00から唯一浮いた存在で、盗みに入るには絶好の標的であったはず。
まさかこんな形で報復が来ようとは思ってもみなかった。
嫌だ…死にたくない…。
こんな街出て行くって…この冬を越せたら春一番にここを堂々と出て行くと決めていたのに。
あと…あと少しだったのに…あの街を出て両親を探そうって決めていたのに…。
自分を捨てた奴のことなんかどうでもいいって思っていたのに、心のどこかでずっと探し続けている。
夢にも出てくる。だけど、どう目を凝らしても顔が全く見えない。
だから確かめたかった、両親の顔を。
見るだけで十分だから…このまま死ぬなんて絶対嫌だ。