この雪の下で春を待つ

そう問うと、フーは悲しそうにうつむいてそっと頷いた。

下級の、身分の低い人だったのだろうか。都会の方では身分の低い大人も奴隷に売られていると聞く。

もしかしたらフーは都会で産まれ、貧しいながらも幸せに暮らしていたのかもしれない。

親を奴隷にされ、1人になってここまで流れ着いてしまったのかもしれない。

目の前の少女があまりに不憫に見えて、奴隷商に酷く腹が立った。

ふと、リークは今の自分の心に気が付いてゾッとする。

同情した…?

同情すれば、放っておいていられなくなる。

同情すれば、自分の命が危険にさらされる。ここはそういう街だ。同情で、その場の感情で動けば自分の命さえ守ることは難しくなる。
< 39 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop