この雪の下で春を待つ
この街を出て行くんだ。
この冬を越したら絶対に、この街を堂々と出て行く。奴隷としてでもなく、もちろん死体として運び出されるのでもなく。
自分の足で堂々と地を踏んで出て行くのだ。
それまで…死ねない。
リークは自分とフーを包んでいた真っ赤の毛布の中から出て、不思議そうな顔で自分を見るフーに毛布を巻きなおした。
自分のポケットを探り、ジーンから報酬としてらった銀貨を全てフーの手の上に乗せる。
「今はこれしか持ってない。でも礼だから」
戸惑うフーに銀貨を押し付けて背を向ける。
これ以上関わらない。もう赤の他人だ。
「じゃあな、生き残れよ」
「あ…う…あぁ!」
フーの悲しそうな声が後ろ髪を引いたが、それを振り切ってリークは走ってその場を去った。