この雪の下で春を待つ
「毒かよ…」
体が痺れる猛毒だ。おそらくこの辺りの孤児は全員それを食べてしまったのだろう。
善意で分け与えられたはずのパンに、毒物が入っているなど誰も思いはしない。
こんなことをする奴はこの街でただ一人…。
「あのブタ野郎…」
奴隷として売るために一気に回収にかかったのだろう。
春に道端で孤児が溢れていたら、わざわざ買う必要などありはしない。
ポールは孤児を売るために、街の孤児に猛毒の入ったパンを配り、体が痺れて動けなくなったところを捕まえるつもりらしい。
その証拠にどの孤児の手にも同じパンが握られているのだ。
この数の孤児を助ける手段をリークは知らない。
だが、寄り添う孤児の中に体が麻痺して動けなくなった者を、心配そうに見つめる孤児もいて、思わず目を背けた。