この雪の下で春を待つ
先住民たちの話にぼんやりと耳を傾けていたリークは、不意に向けた視線の先に孤児たちに毒入りパンを配った張本人であるポールの姿を見つけた。
そんな彼の両腕には小柄な孤児が2人捕らえられている。もう回収に入りだしたのだ。
助けたとしてもそれ以上何もできない。リークが目を背けようとしたとき、ポールの足元に落ちた物に思わず目を疑う。
それはリークの命を救い、ずっと心に居座り続けるフーの真っ赤な毛布だった。
ポールに目を向けると、彼が周りを見回した時に一瞬だけ見えた少女の顔は間違いなく、フーだった。
フーも毒入りパンを食べてしまったのだ。
その瞬間、自分でもどうしたのか分らなかった。
ただ、体が勝手に駆け出していたのだ。あの巨体に抱えられる小さな少女を助けるために…。