この雪の下で春を待つ

「コソ泥坊主が、邪魔ばっかりしやがって」

「フーは渡さねぇ!どっか行っちまえ」

リークの言葉にポールは舌打ちしたが、すぐに違う孤児を抱えて去って行った。

代わりならたくさんいるのだ。たまたま運びやすい孤児が罠にかかっただけ。それがフーだったというだけなのだ。ポールがこだわる必要はなかった。

ポールが去った後もしばらく彼が去って行った方向を睨んでいたリークだが、腕の中のフーがもぞもぞと動いていることに気が付いてそっと顔を覗き込む。

「り…くん…」

「おーい、リーク忘れもんだぞ~!!」

フーの言葉をかき消す声は、先住人の男のものだ。

男はリークが投げ出していった袋を抱えて持ってくると、そこで初めてフーに気が付いた。
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