この雪の下で春を待つ
とんとんとリズムよく背中を叩いていると、フーは安心したのか急に瞼が落ちてきてそのまま目を閉じるとすぐに寝息が聞こえてきた。
寝顔を見るとわずかに笑みを浮かべていて、孤児であることを忘れてしまったような幸せな顔をしていた。
鉄格子の間から吹きこんできた風が背を撫でる。一瞬身をすくめたがすぐにフーのぬくもりが体に伝わって、自然と緊張が解ける。
寄り添うことが命を繋げていく。
それが例え、1日、1時間…1分、1秒という短い時間であったとしても。人のぬくもりが生きることを教えてくれる。冷たくなった心に小さな火を灯してくれる。
だから人は寄り添って生きていくのだ。生きることを見失わないために…。
リークはフーの体を抱き寄せて更に抱きしめた。フーの小さな命が伝わってくる。
随分前に失ったぬくもりだ。もしかしたら自分はずっとぬくもりが恋しかったのかもしれない。
1人でいることに慣れてなどいなかったのだ。いつも自分はどこかで寄り添う者たちを目で追い、そこに自分の姿を重ねていた。