この雪の下で春を待つ
木彫りでは誰もが目を見張るような細かな作品を作り上げるほど手は器用なくせに、性格は随分不器用で1日に1言程度しか話さないほど口下手だった父。
物静かでいつも控え目な笑みを浮かべて自分を見守ってくれて、温かい食事を用意して父と自分を待っていてくれた母。そんな2人の面影を重ねて…。
「フー…フーはいなくならないよね…?」
もう1人に…孤独を抱えて生きていきたくない…。
誰かに寄り添ってぬくもりを感じていたい。
冷たい空気に1人で耐えるなんてもう嫌だ。
「そばに…いて…」
頬を温かい滴が流れて濡らしていく。
もう泣かないって、両親に捨てられたとき決めていたはずなのに。
まだ覚悟も、決意も弱いまま。それでもこの決意だけは守ろう。
フーを守る。共に生きていく。
この決意だけは…。
空に上がった月の光が差し込んで小さな地下の部屋を照らす。
闇に浮かんだ2人の子の姿は、あまりにも小さかった。