この雪の下で春を待つ
3.母親
「リーク!おっき、おっき!!」
肩を揺さぶられて心地いい眠りから引きずり出されそうになる。
眠りを妨害する手を振り払って、無意識のうちに温かい小さな体を抱きしめる。
「うっ…リーク…おっきちて…」
耳元で小さな声が途切れ途切れに聞こえてくるが、そんな声さえも心地よくて一度浮上しかけた意識が再び沈んでいく。
もぞもぞと腕の中のものが動いて出て行こうとすると、抱きしめる力を強めて逃げられないようにした。
腕の中のものがようやくおとなしくなって、意識もまた深い眠りの底に落ちようと徐々に沈んでいく。
「…む~…リークおっきするの!!」
耳元で鼓膜が破れるような大音量の声が聞こえたかと思うと、温かいものを抱きしめている腕に鋭い痛みが走った。
これには寝起きの悪いリークもたまらず飛び起きて、痛みの走る腕が噛みつかれているせいだと知ったことでなぜか更に痛みが増す。
「いって~!!?」
まだ暗い朝の廃墟に、リークの情けない悲鳴が轟いたことで修道院の近くにいた孤児たちも一斉に目を覚ます羽目になった…。