この雪の下で春を待つ

すると、微かに聞こえてきたのはとく…とくという心臓の音。

生きているんだって当たり前のことを感じて、ふっと笑みがこぼれた。

「一緒に冬を越そう。そしたら…春を探しに行こう」

「は…る…?」

「温かいんだって。花が咲いて風が吹いて…桜っていう花が舞うんだ。冬眠から目覚めた生き物たちが一斉に動き出すんだよ」

このエリア00では中々見られない春の訪れ。

日が今とは正反対に長くなり、雪が溶けること以外大した変化がない。花すら山に入らなければ見ることが難しい。

「フー…花…見たい」

「この街を出て、花を見つけに行こう。一緒に…」

「うん!」

この冬を必ず越す。そしてこの凍えきった街から出て行く。

リークの決意が新たになる一方、フーはまだ見ぬ未開の地に胸を躍らせているようだった。
< 66 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop