この雪の下で春を待つ
すると、微かに聞こえてきたのはとく…とくという心臓の音。
生きているんだって当たり前のことを感じて、ふっと笑みがこぼれた。
「一緒に冬を越そう。そしたら…春を探しに行こう」
「は…る…?」
「温かいんだって。花が咲いて風が吹いて…桜っていう花が舞うんだ。冬眠から目覚めた生き物たちが一斉に動き出すんだよ」
このエリア00では中々見られない春の訪れ。
日が今とは正反対に長くなり、雪が溶けること以外大した変化がない。花すら山に入らなければ見ることが難しい。
「フー…花…見たい」
「この街を出て、花を見つけに行こう。一緒に…」
「うん!」
この冬を必ず越す。そしてこの凍えきった街から出て行く。
リークの決意が新たになる一方、フーはまだ見ぬ未開の地に胸を躍らせているようだった。