この雪の下で春を待つ
進んでは転んで、転んでは滑って逆戻り。それを何十回と繰り返してようやくたどり着いたのは、小さな洞窟だった。
少し薄気味悪い洞窟は獣の匂いに溢れていて、リークは思わず口を閉じ、鼻をつまむ。
フーはそんなものもろともせずに洞窟の中に入ると、追ってこないリークを手招きした。
リークはもちろん遠慮したかったが、フーがしつこく呼ぶのに折れて慎重に洞窟に近づいて中を覗いた。
「フー!?」
獣臭さも気味の悪さも一瞬で忘れた。洞窟はそれほど深くなく、入り口からでも充分中を見回せた。
その洞窟の最奥で、フーは丸くなって眠っているオオカミに寄り添っていた。オオカミの毛に顔を埋めているフーにリークは顔を真っ青にさせる。