この雪の下で春を待つ
街を抜けて郊外まで走って来た少年は、やっと立ち止まって振り返った。
「へっ、誰があいつなんかに捕まるかよ」
手に握っているのは、ペットボトルの水とパンがひとつ。そして彼のポケットには銅貨が3枚。
孤児を売って金儲けしているポールは、10年前にこの街にやっていた労働者の一人。3年前に解約されてからも街を出て行かない変わり者だ。
その上、この街に流れてきた浮浪児などを捕まえて、春にやってくる奴隷商に売りつけているのだ。先住民たちから非難されるが本人は聞かぬ振り。やがて、彼はこの小さな町で孤立した。
それが格好のねらい目になることも知らずに…。
浮浪児の多くは、何もせずに道端で凍死するか、わずかな金と食べ物を求めて靴磨きなどの仕事をするもの、仕事をせずにごみ溜め場から残飯を漁るもの。
そしてリークのように盗みを働く者に分かれていた。