この雪の下で春を待つ
リークはそっと、洞窟に入る。
リークが入って来てもオオカミが動くことはなかった。そのまま、フーの隣に来てもオオカミは動かない。
そっと顔を覗き込む。
固く閉じられた目。開きっぱなしの口からは干乾びた舌が見えた。毛に触れる。毛の下にあるはずの体温は全くない。雪と同じくらいに冷たい…。
オオカミは死んでいた。
数日前なのか、数か月前なのか、もしかしたら数年前なのかもしれない。
オオカミの遺体は、ずっと誰の目にも触れず、誰にも侵されずここにあったのだ。極寒の地だからこそ、腐らずに体内の水分が徐々に抜けているのかもしれない。
遠くから見れば、オオカミが死んでいるのかなんてちっとも分らなかった。
未だにオオカミの毛に顔を埋めているフーの肩に手を乗せる。すると、フーは顔を上げて自分を見た。