この雪の下で春を待つ

「フーはここで育ったの?」

「うん。まんま、守ってくれた」

寄り添いながら洞窟を見回すフーにつられてリークも洞窟を見回す。土壁で、それ以外何もない。修道院の地下の部屋のような壁だ。

獣の臭いは相変わらず、洞窟にこびり付いていたがそれほど気にならなかった。

「まんまね…いっぱい教えてくれた。言葉も、生き方も…教えてくれた」

「うん」

「1人ぼっちのフー、まんま、温めてくれた。ご飯くれた、いっぱい、ペロペロした。なのに…まんま、動かなくなっちゃった…」

「だから、街に降りたの?」

「まんま、治す、人…探した。でも…お医者さんいない。まんま、撃った…」

墓に埋まったオオカミを思い出す。

痩せ細った体の数か所に見られた穴。虫でも入ったのかと思ったが違った。あれは銃弾の跡だったらしい。
< 72 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop