この雪の下で春を待つ
「フーはここで育ったの?」
「うん。まんま、守ってくれた」
寄り添いながら洞窟を見回すフーにつられてリークも洞窟を見回す。土壁で、それ以外何もない。修道院の地下の部屋のような壁だ。
獣の臭いは相変わらず、洞窟にこびり付いていたがそれほど気にならなかった。
「まんまね…いっぱい教えてくれた。言葉も、生き方も…教えてくれた」
「うん」
「1人ぼっちのフー、まんま、温めてくれた。ご飯くれた、いっぱい、ペロペロした。なのに…まんま、動かなくなっちゃった…」
「だから、街に降りたの?」
「まんま、治す、人…探した。でも…お医者さんいない。まんま、撃った…」
墓に埋まったオオカミを思い出す。
痩せ細った体の数か所に見られた穴。虫でも入ったのかと思ったが違った。あれは銃弾の跡だったらしい。