この雪の下で春を待つ
翌日、2人は目を覚ますと墓の前までいって、黙祷を捧げた。
しばらくそうした後に、先に立ち上がったリークがフーの手を握る。
明るいうちに山を下って、あの修道院まで戻るのだ。ぐずぐずしている時間はなかった。
街を出て行く前にもう一度ここに来ようとフーと約束し、また来ることをオオカミの墓に誓ったリークは山を下って歩き出す。
帰りはフーの先導もあってか、ほとんど転ばずに降ることができた。
一晩のうちにまた雪が積もったらしい。
山を降りてからの荒野は乱れのない、雪景色となっていた。昨日2人が通ってきた道は雪に埋め尽くされて、全く分からなくなっている。
今度はリークが先導をして、日が暮れる少し前に2人は修道院へと戻って来ることができた。
地下の部屋に入ってようやく息をつく。山でついた泥や血は、帰ってくるまでの雪道で拭い取られたらしい。ほとんど気にならなかった。
だが、そんなことを気にする余裕など2人にはなかった。
一気に山を降り、道のない荒野の雪をかき分けて戻ってきたのだ。
流石に体力が底を尽きた。空腹さえも忘れて2人は倒れ込むように横になり、そのまま泥のように眠ってしまった。