この雪の下で春を待つ
街灯の下、1人の男が豪雪の中を走る。
その表情は必死で、寒さなど忘れているようだった。何度か足を滑らせたが、慣れているのも手伝って彼は転ぶことなく走り続ける。
こうして行き着いた先は、この街で唯一の医者を名乗るダイの診療所兼自宅。
男は息が落ち着くのを待たずに、閉ざされた戸を乱暴に、激しく叩く。
「ダイ、開けてくれ!俺だ、ジーンだ。開けてくれ!!」
「なんだい、騒々しい」
しばらくして、中から出てきたのは無精髭を生やした無愛想な男だった。
煙草をくわえたダイは一度手に煙草を取り、煙を吐き出す。雪が降るのとは反対方向に煙が上がっていく。
それを呑気に見送ったダイは、そうしてジーンを見た。