この雪の下で春を待つ
「何かあったのか」
「ポールの集めた孤児たちが集団でチフスに罹った。既に死者もいる」
「…ほお?」
「街に残っている孤児の数人にもチフスの症状が出始めている。このままじゃ」
切迫した表情のジーンとは対照にダイは大した危機感を見せずに、煙草を深く吸って煙を吐く。また煙が天に昇って消えていった。
そんな危機感の欠片もないダイの態度にジーンは苛立ちを募らせる。
「おい、死人が出てるんだぞ!」
「それがどうした」
「なん…だと…?」
ダイは短くなった煙草を地に落とし、靴でそれを踏みつけて消火する。そして、1人で熱くなっているジーンを睨みつける。