この雪の下で春を待つ

「孤児はこの寒さで死んでいくのさ。それが伝染病になったところで何になる。ただ、今までよりも早いペースで孤児が死んでいくだけだ」

黙り込んだジーンに、ダイは更に続ける。

「この街に溢れる孤児に何ができる。お前1人で何がしてやれる?孤児とは一線を置き、新年を迎えたその日だけ恩恵を分け与える。それがここの流儀であり、暗黙のルールだ。違うか」

ダイの言葉にジーンは遂に何も反論が出来なくなって、黙り込んだ。そんなジーンにダイは大きくため息をつき、背を向ける。

「毎日風呂に入って身を清め、しっかりとした栄養をつけろ。そしてなるだけ孤児には近づくんじゃねぇ。いいか、チフスはシラミやダニによる感染症だ。不潔なところがお気に入りなのさ」

ダイはそう吐き捨てるように言って、家の中に戻る。もう、ジーンが戸を叩くことはなかった。
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